HAYASHI REPIC

AS-i(アジー)とは

AS-i(アジー)は、工場内の自動化ネットワークを構成するフィールドバスの1つで、最下位層であるセンサレベルネットワーク向けに開発されました。上位のネットワークでは、「大容量の通信」や「多種の機器の接続・制御」等を行うのに対して、AS-i(アジー)は、接続できる機器をセンサ、アクチュエータに絞ぼることで、センサレベルネットワークで求められる「高速な通信」や「簡単な設置・配線」を実現すると同時に、省配線化による工数とコストの削減や、システムの変更や拡張が容易といったメリットを提供します。また、PROFIBUS、DeviceNet、CC-Linkなど、様々な上位ネットワークとの接続や連携を容易にするために、数多くのフィールドバスに対応したゲートウェイを用意しており、現行のフィールドバスに無理なく組み込むこともできます。

図1:フィールドバスの階層とAS-iの位置

図2:省配線化のイメージ

特徴

  • 1本の専用フラットケーブル(電源、信号線含)で、マスタと複数のスレーブを接続できるので、省配線、工数の削減が可能。(使用する電流が大きい場合は、黒色のフラットケーブルが別に必要)
  • 専用フラットケーブルへのマスタ、スレーブの取り付けは、ケーブルの被覆剥がしが不要で、挟み込むだけで確実に取り付けることができます。
  • マスタ/スレーブ方式で、1つのマスタに対して最大62台のスレーブが接続可能。
  • スレーブは、アナログ/ デジタルのI/O通信やAC/ DCモーター制御などが可能で、1スレーブに最大8点のI/O機器が接続できる。
  • ネットワーク内の通信エラーや補助電源の短絡等の検出が可能。
  • 高いEMCノイズ耐性がある。
  • ネットワークの構成や接続機器の追加と変更が容易。
  • 複雑な設定がないので、ネットワークの構築が容易。
  • 緊急停止ボタン等の安全制御機器が用意されており、AS-iネットワーク内への混在設置も可能。
  • 高速の通信速度(最大5ms)。

導入のメリット

AS-iの最大の特徴は、センサレベルの配線を省配線化して、設置からメンテナンスまでを効率的、経済的に行えることです。従来のセンサレベルの配線では、PLCやI/O装置から各センサ、アクチュエータまでそれぞれ配線を行っていたので、配線の設計や複雑な配線作業が必要でした。また、設置後の追加や変更、そして、ネットワークエラー等が発生した際のメンテナンスが複雑になっていました。

AS-iでは、マスタと複数のスレーブを1本のケーブルで配線することができ、また、機器にケーブルを挟み込ませるだけで接続できるので、配線の設計が簡略化され、配線作業の工数を大幅に削減できます。設置後の追加や変更も、装置をケーブルから取外して、挟み込むだけなので、簡単に行えます。また、今までは別々に構築していたセンサ等の機器を制御する通常のネットワークと安全制御のネットワーク(SIL2, SIL3)を同一の配線で構成することもでき、より一層の省配線化を実現します。

図3:AS-i機器の取り付けのイメージ

図4:AS-iネットワークのイメージ

他のセンサレベルネットワークに対する優位性

センサレベルネットワークでは、他の種類の省配線システムも存在しますが、その中でも、AS-iは、様々な使用環境を想定した特徴を有しており、新規、或いは既存のネットワークにかかわらず、容易に導入でき、下記の様な特徴を有しています。

  • 多くの上位ネットワーク(フィールドバス)に対応し、接続可能なゲートウェイ(マスタ)を用意。
    (例:PROFIBUS, PROFINET, EtherNet/ IP+ModbusTCP, BACnet/ TCP, DeviceNet, ControlLogix, CompactLogix/ MicroLogix, EtherCAT, CC-Link、POWERLINK, CANopen、PROFIsafe, Sercos, Safety over EtherCAT, CIP Safety)
  • IP20, IP65, IP67等の保護等級に対応した装置がリリースされている。
  • 安全制御ネットワークの構築が可能で、通常のAS-iネットワークと混在も可能。また、安全制御に対応した上位ネットワークにも対応している。
  • 安全制御対応の機器は、SIL2, SIL3に対応。
  • 国際的な規格であるIEC62026-2で規定されており、世界的に使用されている。
  • IO-Link対応のマスタがリリースされているので、IO-Linkに対応したセンサ等をそのまま接続して、AS-iネットワーク内で使用できる。
  • マスタ、スレーブのアドレス設定が不要。
  • 終端抵抗が不要(伝送距離が100m以内の場合)。
  • 多彩なトポロジー(ケーブルの配線形態:バス、ツリー、スター、リング)に対応。

使用例

AS-iは、特に、生産や物流現場での材料、製品等の移動にかかわるマテリアルハンドリングの分野と相性が良く、導入が容易に行えるので、数多くの導入実績があります。AS-iモーターモジュールは、マテリアルハンドリングに欠かせないコンベアを駆動させるAC/ DCモーターを制御するためのスレーブで、AS-iネットワーク内に設置してモーターを接続することで、AS-iネットワークを通してモーターの回転を制御することができます。加えて、コンベア上の物品の動きや状態をセンサで検出し、その情報を利用してコンベアの制御が行え、また、緊急停止スイッチやライトカーテンなどの安全制御機器も同一のネットワーク上に配置することができ、コンベアのネットワークをシンプルに効率的に構築することができます。

図5:ACモーターとセンサによるコンベア制御

図6:DCモーターとセンサによるコンベア制御

図7:AS-iネットワークを利用したコンベアライン

図8:AS-iネットワークを利用したパッケージングマシンライン

その他にも、IP65, IP67に対応したスレーブを活かし、湿度が高い場所や-40℃~+70℃といった厳しい温度環境、振動や衝撃のある場所などでも使用されています。加えて、既存のネットワークと併設する形で、安全制御ネットワークとしても使用されています。

図9:厳しい温度環境や振動や衝撃のある環境でのアプリケーションイメージ

広がるAS-i(アジー)の世界

AS-iは、既存のセンサレベルネットワークの技術に加え、新しい形のシステムを提供します。

  • Safe Link技術によって、緊急停止ボタンなどの安全制御機器を上位ネットワーク内に配置することが可能。また、Wireless LANにも対応しているので、離れた場所に緊急停止ボタン等を配置することができます。
  • IO-Link対応のマスタを使用すれば、AS-iネットワーク内にIO-Link対応のセンサがそのまま使用できます。
  • センサレベルネットワーク用に開発されましたが、現在では、ビル等でのオートメーションネットワークに対応したスレーブが開発され、安全制御を含めてビルディングオートメーションの分野でも使用されています。